
「新機構フロント トーコントロール ストラットサスペンション」
「どうしてストラット式を採用したのか」
HONDAは永きにわたり「ダブルウィッシュボーン式サスペンション」を採用して来ました。
しかし、定評&実績のあるこのサスペンション形式を捨て、何故DC5R&EP3及びストリームなどのフロントサスペンションに
今回新設計された全く新しいタイプの「新ストラット式サスペンション」を採用したのか?検証します。
(*注)ココでは従来ストラットと明確に分ける為に「新ストラット形状」と称します。
メインフレームを「グローバルコンパクトシャシー」とし、ストリームからインテグラやシビック、更にはTYPE−Rまでを
共通メインシャシーとする事で(無論、各ピースは別物だしTYPE−Rでは大幅な補強&軽量化を図っています。)
大幅に汎用性&合理化し、コストダウンを計った。しかし、その為サスペンション形状も伝承する形になります。
コンパクトで部品点数の少なさや設計自由度の高さ、汎用性を考慮すると、「ストラット式サスペンション」が理想的。
しかし、従来の基本設計の古いストラット形状では、コーナリングパフォーマンス性は低い。
従来までのストラットの欠点である「部品点数が少ない為に応力集中し易く、剛性確保が難しい」
「バンプ&リバンプ時のトー角変化を含め対地アライメント変化量が多い」等が問題になって来る。
従来までのHONDA定番の「ダブルウィッシュボーン形状」から「ストラット形状」に変更する為には、その分の
性能UPが求められた・・・そして、その結果!HONDAは「設計した人って天才じゃないの?」って位に
素晴らしい独自の「新型ストラット」を開発&採用した訳だ。
トヨタのスーパーストラットと似てるって人も居るけど、根本的に機構が違うし、考え方&発想も違います。
(備考)トヨタのセリカなどに採用されている「スーパーストラット」と言う形状は、従来のストラットの欠点を
補う考え方は近いのですが、こちらは「対地キャンバーを最適に保つ」のが狙いです。ダンパーの真ん中近くに
アームを増設し、またダンパー下部を延長してるので、一見形状が似てるようにも見えますが、ダンパー中間の
アームはアッパーアームとして車体に結合され(その為、テーパージョイント部がDC5とは逆にダンパー側についていますから
操舵時にダンパーは回転しません)ダンパー下部を延長して、ナックルの下側と結合して、「ロアアームをダブルジョイントしている」
のが大きな特徴で、タイロッドは従来型と同じでナックルを直接操舵し、ナックル下部が従来ストラットより多関節な動きをする事で
効果を得ています。
つまり、ストラットで有りながら、部品点数を増やさず(根本的に複数のパーツを無理に1つに合成して複雑な形状をしています。)
マルチリンク化して「構造自体」をマルチリンク形状に近付けた手法です。
一方、HONDA新ストラットは、ストロークによる対地トー角変化をタイロッドでトーをコントロールして変化を減らすのが狙いです。
構造&構成はストラットとほぼ同形状ながら、「動きをダブルウィッシュボーンに似せる」手法なのです。
HONDAの新ストラットとは構造も発想も全く違うのです。んま、御蔭でチューニングし辛いって欠点は酷似していますが・・(~~;)>
「ダブルウィッシュボーン式サスペンション」
2つの(ダブル)鳥の胸骨(ウィッシュボーン)と言う名前通り、色々な発展型タイプがありますが基本的には
車軸を受けるナックル(ハブキャリア)を上下2つのアームで挟み込むように支え、その上(アッパーアーム)と下(ロアアーム)の
間にショックアブソーバーを配置した構造。
アッパーアームはA字や逆V字の形をしていて、車体にリンクを介してボディーにしっかり2点で支持されているので、
前後方向にも強度確保し易い。コーナリングフォース&横力や外部入力に対しても、アッパー2点&ロア2点で
ボディーにしっかり保持されているので、ショックアブソーバーに掛かる負担がストラットより少なくて済む。
また、アッパーアームをロアアームより短くし、その長さの違い(アーム支点位置)でバンプ&リバンプ時の
トー角変化&キャンバー変化を最小限に出来る。つまり、対地変化が少なく乗り易いって意味。
その構造上、設計自由度が高く、コーナリング性能や直進安定性&乗り心地などのセッティング(味付け)が
し易く、スポーツカーにも適している。特にFF車の多いHONDAが得意なサスペンション形状で、DC2やEK9
など、歴代のHONDA車は殆ど、このサスペンション形状を採用していて評判も高い。
逆に、構造が複雑なので部品点数が増え、メンテナンス性&コスト性が悪い。又、チューニングする場合
コーナリング性能UPに欠かせない「ネガティブキャンバー」を構造上、変更出来ない欠点がある。
(備考)EK9シビックレースやDC2ジムカーナ車両において、ダブルウィッシュボーン形状を採用してるにも関わらず、
ネガティブキャンバー角がついてる場合がありますが、それは、アーム自体を故意に曲げて無理矢理キャンバーを
故意に付けるか(本当はレギュレーション違反です)アームの変更して長さを調節して強引に角度を付けています。
構造上面倒&大掛かりな作業で、ストラット形状のようにアッパーマウントでキャンバーを付ける事は出来ません。
「従来型ストラット式サスペンション」
(Fの場合)「マクファーソン」ストラット式とか(Rの場合)「チャップマン」ストラット式と発案者の名前が頭に
付く、基本設計の古いサスペンション形状。構造も実にシンプルでショックアブソーバーをサスペンションを
構成するアームの一部とし、支柱(ストラット)の役割を兼ね備えた構造。
ショックアブソーバーを車体から斜め横に配置して、上端をアッパーマウントに固定、下端をナックル(ハブキャリア)を
介し、ロアアームに連結させている。つまり、ロアアームと支柱代わりのショックとナックルだけで構成されている訳。
フロントの場合、支柱になるショックアブソーバー自体がコーナリング性能に重要なキングピン(厳密には
仮想キングピンアングル)の役割も担う、極めて合理的でシンプルな構造です。
部品点数が少なく、コスト面や軽量化&スペース的にも有効でエンジンレイアウト上でも居住性でも配慮し易く、
FF車の多くは、このタイプです。
チューニング的にもアッパーマウントをピロ化してショックアブソーバーの傾きを大きくすれば、簡単にキャンバーを
調整出来る。しかし、逆にコーナリングフォース&横力や外部入力をショックアブソーバー自体が受け持つので
ダンパー伸縮時のフリクションが大きく、剛性確保が難しく、作動性も損ね易い。
また、構造上バンプ&リバンプ時共にトーアウトに急激に変化し易く、コーナリング性能も確保し難い。
キャンバー変化&トー角変化&トレッド変化もウィッシュボーンより大きく、性能的に劣るのは否めない。
「ト−コントロール新ストラット式サスペンション」
DC5R&EP3やストリームにも採用されていて、今後のHONDAのFF車に続々と採用されるでしょう。
ストラットの概念&欠点を打ち破る、全く新しいコロンブスの卵の発想!
トヨタのスーパーストラットとは根本的に発想も構造も違います。スーパーストラットの基本はロアアームを
ダブルジョイント化して、多関節化して対地適正化を狙った構造。
発想は素晴らしいのですが、バネ下重量が増え、サスペンションストロークを確保し難い上に、
動きが複雑に絡む為に評判が悪い。っと言うか、ハッキリ言って「メーカーサイドの煮詰めが足りない」ってのが
本当の所でしょう・・。(~~;)>(悪いって意味ぢゃ無いヨ?でも・・その後あんまり搭載されないのが・・・)
HONDAの新ストラットとは、従来ではナックルにジョイントしてステアリング(操舵)を受け持つタイロッドを
フロントサスペンションの中間付近(エンジンの後ろ程度)の高い位置にマウントして、タイロッドからの操舵入力を
そのまま、ショックアブソーバーの真ん中程度の位置で受ける形状。つまり、操舵軸を下から上に上げた形にした。
何故そんな形状にしたか?っと言うと、タイロッドアームに「アッパーアームの役割を兼ねる」為なのです。
従来のストラット式の欠点「対地変化」をダブルウィッシュボーン並に減らす為に、部品点数を増やさず、
元々操舵する為に存在するタイロッドに、ダブルウィッシュボーンのアッパーアームに近い動きを兼ね持たせた
訳です。

「トーコントロールの仕組み」
トーをコントロールする働き。つまり、従来のストラットの悪い欠点=対地トー角変化を最小限に減らす働きです。
簡単に言うと、バンプ時に過度に付き過ぎるトーアウトをストラット後方に連結されたタイロッドエンドが
「後ろからナックルを引っ張る」形で規制して、逆にリバンプ時には突っぱねて「後ろからナックルを押し出す」形で
トーイン方向に保つって仕組みなのです。実にシンプルで効果的な構造です。
また、そのバウンド&リバンプ中のストローク間でのトー変化も極めて穏やかな直線的に近い緩いカーブを描く、
つまり、素直な特性を持たせています。
この為、単純にタイロッドを配置するのでは無く、ダンパーとのジョイント位置関係やタイロッドの開き角度が重要です。
ストロークするにつれ変化するトー角を「ある一定位置では押して、ある一定では引っ張る」と言う特殊なコントロールの
働きをするので、タイロッドの長さも角度も何度もテストされ、最適にトーをコントロールするようにレイアウトされています。
タイロッドの角度は、タイロッドエンド(ダンパーのアームジョイントと結合)とステアリングギアBOXを結ぶ位置関係で
決まります。純正でも一見、水平に一直線に配置されているように見えますが、若干緩いV時なの。
つまり、この微妙な「タイロッド角度」と「ピッタリ丁度のタイロッドの長さ」がミソで、この機構の要なのです。
逆に、この「微妙さ加減」だけでトー変化=コーナリング性能の多くを担うのでチューニング&セッティングが
難しいのですが・・。(~~;)>今後もコレが重要なので覚えておいて下さい。
「独特なスタイルはサスペンション形状が大きな要因」
ストラットを採用する場合、構造上アッパーマウント取り付け位置を低く設定し辛い。ショックアブソーバーを
支柱に見立てつつストロークを確保しなくてはならない。キングピンアングルの関係上、必要以上にショックアブソーバーも
傾けられないのです。その為、フロントのオーバーハング(タイヤハウスの上)が盛り上がったスタイルになってしまう。
「人身事故時に被害者をボンネットに跳ね上げ、衝突衝撃を和らげるG−CONボディー」とか「アメリカンスタイルの
固まり感のあるスタイル」等と最近のHONDA車の独特なスタイルですが、元々はストラットサスペンション形状を採用した為
アッパーマウントを低く設定出来ない。つまり、フロントボンネットサイドを「低く出来ない」ってのが、独特なデザインの
一番大きな要因だったりする。(~~;)>でも、カッコ良いし、良いデザイン処理だからGoodだよネ!!
「色々な要素が可能にしたレイアウト」
ココまでで、新型ストラットの合理的で素晴らしさが理解出来たと思います。では、何故今回採用したか?っと言うと
冒頭に述べたように、汎用性の高い「グローバル コンパクトシャシー」を採用するにあたって、どうしても避けられない
コスト面や整備性、汎用&流用性、軽量&コンパクトで部品点数の少なさが求められたのですが、それだけでは無い。
DC5R&EP3のTYPE−R、それにストリームやステップワゴンにも搭載されてるK20型エンジンは「後方排気」です。
低公害排出ガズ等のエミッションを考慮し、通常エンジンとは逆に後ろ向きに排気するレイアウトの新設計エンジンで、
この利点は高熱で分解反応する「触媒」までのエキマニの長さを短くする事で、始動直後から触媒の性能が発揮され、
低公害排出ガス化出来るのです。
その為、エキマニが本来ステアリング機構を受け持つステアリングBOXが配置されるエンジンルーム後方下側と
(運転席の足元)位置が近くなり、熱害が辛い。そこでレイアウト的にステアリングBOXを上に上げれば、
充分スペースが確保出来る。しかもその分、エンジンをより中心に近い「ミッドマウント」にでき、問題は解消する。
また、ストラット式はダンパーごとステアリング操舵する機構ですが、その操舵を受け持つダンパーのほぼ中央位置で
操舵出来る為、コンパクトで、しかもトーをコントロールしながらリニアなハンドリング性能を発揮出来る。
仕方無しに採用された「苦肉の策」のサスペンションで「こうにしか出来なかった」のですが、逆に言い換えれば、
大変「理に適ったサスペンション形状」の採用ともいえるのです。
「トー角度」
全てのサスペンション構造上で重要な「トー角度」簡単に言うと「上から見てタイヤが真っ直ぐ向いてるか?」って事です。
つまり進行方向に対してタイヤが「真っ直ぐ」ならば「トーは0度」となり、「進行方向に爪先が寄ってる」なら「トーイン方向」
逆に「爪先が広がったガリ股」なら「トーアウト方向」って意味です。
コレが正常で無いと、真っ直ぐ走りませんし、コーナリング性能にも大きな影響を及ぼします。
本来なら、静止時でもバンプ&リバンプ時でも「トーが常にゼロ」ならベストなんですが、サスペンションって言う機構上、
それは在り得ません。
(そもそもサスペンションと言う機構は名車スポーツカーでもF1レースカーでも「妥協の産物」なのです。
本当は、「トー角」(上から見た左右のタイヤの開き具合)も「キャンバー角」(正面から見たタイヤの傾き角度)も
「キャスター角」(サスペンション支点の進行方向に対しての傾き角度)も全て「変化ゼロ」が一番理想なのです。
しかしながら、上下にストロークする限り、それは現在の自動車工学の技術では絶対に在り得ない。無理なの。
例えば、貴方の左右の腕を伸ばして見ると良く判る。左右に延ばした手をサスペンションアームと例えて、両手に
本を持ってみましょう。その本がタイヤだとします。その状態から左右の腕を羽ばたく様に上下してみて下さい。
すると、手に持った本の角度&左右の距離を全く動かさず上下させる事が出来ない事に気付く筈です。
どんなに頑張っても、本の向きや角度、左右の距離を一定に保ったまま腕を上下させる事は出来ませんよネ?
どうにか成らないか?と腕を曲げてみたり手首を曲げてみたり、手伝って貰って2人で4本の腕で持ってみたり・・・・
それが「マルチリンク化」や「ジオメトリーを適正化」って事です。(あはは。本当だよ?)それでも完全には不可能でしょ?
つまり、矛盾した機構を如何に完璧に「近付けるか?」って日夜各自動車メーカーは研究&開発してる訳です。)
ですから、出来る限り変化量を減らしつつ、少なからず起こる変化を直線的に持って行く(ダブルウィッシュボーンに
近付ける)のが理想的な妥協点と言えます。
また、トー角を含めアライメントと言うのは静止時(止まった状態)に測定&調整するものですが、完全にトーゼロより、
DC5の場合、静止時にフロントを若干トーアウト(0〜0度15分程度)に振った方が操舵追従が良くなります。
「トーカーブ(曲線)グラフ」
下のグラフは、「従来のストラット(灰色)」「従来インテグラDC2(緑色)」「新型インテグラDC5(青色)」にして
表したもので、縦軸は、上側がバンプ(沈み)下側がリバンプ(伸び)で単位は「ミリメートル」です。
横軸は左に行くにつれ「トーイン方向」へ、右に行くにつれ「トーアウト方向」で単位は「度」です。
本来、トー角はゼロ度が基準なのでトーアウトがプラス方向、トーインがマイナス方向に表記します。
「トーが−(マイナス)1度」なら「トーイン方向に1度」と言う事になります。(トーインとトーマイナスは同じって意)
それと、表す「度数表記」が統一されてないので判り難いのですが、60進数だと「1度は時計の針と同じ60等分」で
「0・25度=0度15分」となります。(ややこしいので注意!グラフでは10進法で説明します)
グラフで見るとノーズダイブしてフロントが60mm沈み込む(バンプ)とDC5の場合、0.25度(0度15分)に変化
する事が判ります。従来ストラットも同じ値ですが、そこまでの変化カーブがダブルウィッシュボーン式に近い直線的な
ラインを描いています。水色の部分がその差で、変化量が同じでもその過程が素直な特性だと判ると思います。
一般的にトー角度を表す場合(下記のグラフも)「トータルトー角で表します。」つまり左右の合計トー角です。
単純に左右同じアライメントに設定するので、「トータルトーイン1度」なら半分の「片側トーイン0・5度」になります。

「トーコントロールの弱点」
上記で述べたように従来のストラット式の欠点を克服し、部品点数を増やさずにダブルウィッシュボーンに
極めて近い性能を発揮し、両方の利点を併せ持つ「新ストラット」は素晴らしく、ノーマルDC5Rに乗った
人々は総じて「従来に引けをとらない。いや、それ以上の性能UP!!」と高い評価です。
実際に乗ってるオーナーの皆さんも、その素晴らしいコーナリング性能を直接味わって満足していると思います。
また、リアにリアクティブアームを採用し、ノーマルアライメントを−2度に設定する事で高速コーナリング域での
追従性を上げているので、驚く程に高速コーナーが安全に高いレベルで楽に走れるのです。
それがダブルウィッシュボーンに匹敵するコーナリング性能を持ちながら、ストラットの利点(部品点数&軽量コンパクト)
を併せ持つ、次世代の「新設計トーコントロールストラット」なのです。
しかし、この新ストラットにも弱点があります。それは上記グラフに緑色で囲んだ部分。
つまり、極端なバウンド&リバウンド時にタイロッドでトーコントロールしてる関係上、コントロール範囲を
超えてしまうので、急にトー角変化が大きくなってしまいます。
ノーマル状態では殆ど感じ無いのですが、車高ダウンさせると陳著に現れます。
車高をダウンさせると言う事はストロークの始点が変わります。つまり、一般的な車高ダウン(30〜35mm)
させた分、変化量の多い緑色で囲んだバウンド時の限界付近(70mm付近)に到達し易くなる。
特にフルバンプした状態でコーナーに進入しようとすると、急激にトーアウトになり、極端にアンダーステアが
発生して、不安定に陥り易い。意に反した動きを突然する感じになります。
アンダーステアから急激にオーバーステアになったりと、ナーバスな動きになり、難しいとされる由縁です。
またストラットの構造上、ロアアーム軸が車体に入り込む形になるのでコーナリング時のアウト側タイヤの
対地キャンバーがポジティブ方向になってしまいます。
だから限界コーナリング時に接地面をショルダーに頼った、いわゆる「ショルダー走り」に陥り易い。
ノーマルでサーキット全開すると、タイヤのショルダーがボロボロになってしまう。
こちらは、アッパーマウントを変更し、ネガティブキャンバーにセッティングする事で回避出来ますが・・・
それも実は難しい問題があるのです。
「コンプライアンスブッシュ」
コンプライアンスブッシュとは、進行方向の前後に受ける力を吸収する働きの事を言います。
上下の動き(衝撃)はサスペンション及びショックアブソーバーで吸収出来ますが、路面の繋ぎ目や凸凹等
を乗り越える時の前後方向の動き(衝撃)は吸収出来ません。
それを、ロアアームと車体との結合部(コンプライアンス&ロアアームブッシュ)で吸収緩和する訳です。
ガチガチに固めてしまうと、路面の衝撃がモロに伝わるし、サスペンション&車体への負担が大きい。
逆に柔らか過ぎると、路面からのインフォメーションが落ちるし、サスペンションアームの強度が足りず
余計な動きをして、本来のサスペンションの動きを妨げてしまいます。グニャグニャだとブレーキング時に
広がってしまい、トーアウトが付き過ぎるので更に面倒になってしまう。
「コンプライアンスステア」
HONDAは今回初めて「コンプライアンスステアコントロール」を採用しています。
先程述べたように、コンプライアンスブッシュが柔らかいとロアアームがグラグラになってしまい、
コーナリング中のコーナリングフォースでブッシュが撓んでアウト側タイヤが少し切れた(トーイン)になる。
これをゴムの弾力を使った成り行き任せの「コンプライアンスステア」と呼ぶのですが、
コーナリングによって、ハンドル切れ角&トーアングルが変化するので一般的には嫌われています。
HONDAは、逆にこのブッシュに「すぐり加工」(スリ鉢状)を施し大型化。更に「進行方向に対しては強く、
横方向には柔らかく」ワザと撓む形状にして、コンプライアンスステアをコントロールしています。
つまり、ブレーキング&加速の前後方向を固めて、横方向には撓むと言うHONDA初のブッシュ機構で
コーナリング中のアウト側タイヤのトー角をコントロールしている訳です。
詳しく説明すると、「20度回転角差=T・O・O・T」って言う概念があるのですが、前車輪を20度左及び右に
回した時のトーの量を表わします。
直進時トーインになっている前車輪も20度ステアリングを回すと、実は若干トーアウトに変化します。
どんな車もハンドルを切ると、実は左右同じ舵角切れていないのです。
濡れたタイヤが残した軌跡を見れば判る様に内輪差と回転角差が生じるのが判ると思いますが
コーナリング中はスムーズな旋回をする為にアウト外側タイヤより、イン内側タイヤの方が若干多めに
切れているのです。(回転角差)DC5Rの場合、舵取り角度は
この差が無いとスムーズには旋回出来ません。
舵取り角度:内側 35度(isは39度) 舵取り角度:外側 28度(isは28度)
自動車がコーナーを曲がる時、回転方向内側の車輪は回転半径が外側の車輪より小さくなる為に、
円滑な旋回をするには外側の車輪の切れ角度より内側の車輪の切れ角度が大きくならなければならない。
このために前輪のトータルトーがトーインからトーアウト方向へ変化するは避けられないのです。
んで、アウト側タイヤがトーアウト方向になってしまうのですが、HONDAはコレをコンプライアンスステアを
利用してアウト側タイヤをトーイン(若干ハンドルが多めに切れる)状態に変化させる機構に設定したのです。
この利点は、初心者や初めて乗った人には大変有効で「曲がらなければ切り足す」と言う(本来やってはいけない)
アンダーステア回避を容易にし、「下手でもハンドル切れば何とか曲がってしまう」「限界が高い」「失敗しても
リカバーが楽」「スピンに陥り難い」などの利点があります。
貴方も何度か「オーバースピードでも何とか曲がれた」とか「スピンしそうだったけど回避出来た」って恩恵を
受けた筈です。(笑)
しかし・・・乗りこなせて来たり、チューニングする場合にはコレが大きな問題点になってしまいます。
基本がシッカリ出来ていて、限界付近で走行出来るドライバーにしてみれば、妙にトー角が変わるので
ステアリングインフォメーションが少ない上に、動きが読み難い。
また、タダでさえ少ないキャスター角なのに、ブレーキング時にブッシュが撓むのでキャスター角が減ってしまい
セルフステア(直進ハンドル復元力)が減って舵角が残り易い傾向に陥り易い。
また、この機構に頼って運転していると、必要以上にハンドルを切り込む「切りコジ」をしてしまいがち。
初心者&殆どのオーナーに見られる悪い癖で、ハンドルに頼った曲がり方になってしまう。
コーナリングが終了した脱出時点でも、まだハンドルを切ったまま舵角が残ったままになっていませんか?
コレは、このコンプライアンスステアとキャスター角不足が原因で、根本的に「乗り方を直す」必要があります。
「キャスター角」
車輪を横から見た時に、実はタイヤ&ショックアブソーバーは真っ直ぐ垂直には付いていません。僅かに
ショックアブソーバーの上端が後ろ向きに倒れて、タイヤが前に突き出した形にレイアウトされています。
この時、どの程度タイヤ(正確にはキングピン)が斜めに付いているか?っと言うのが「キャスター角」と言い、
この角度が直進安定性&ハンドルの直進方向復元力に大きく影響します。
また、車輪の中心軸の延長ラインとキングピンの延長ラインが交差して地面に接した、その差の長さを「トレール」と言います。
単純にキャスター角が大きく寝ているとトレールは長く、逆にキャスター角が少ないとトレールも短い。
んま、難しいし、キャスター角さえ判ればあんまり必要無いので、覚えなくても大丈夫。大事なのはキャスター角です。
自動車をはじめ、自転車やバイク、台車や掃除機のコマまで「車輪」と呼ばれるモノの殆どに付いてる角度です。
では、何故キャスター角が必要かと言うと「進行方向を向き、その方向を維持する為」です。
判り易く説明すると、棒の先に車輪を1つ付けて垂直に立て、真上から押さえて前向きに押したとしましょう。
どうです?前に押してる筈なのに、あらぬ方向に行ったり、はたまた後ろ向きに行ったり・・・進行方向が定まりませんよネ?
今度はその棒を少し手前に斜め後ろに倒したとしましょう。すると、あら?不思議。そっと押すだけでしっかり前向きに転がります。
これが「キャスター角による直進安定性」なのです。(後ろ向きにもキャスターは働きますが、関係無いので省略します)
この角度を多く(つまり傾きを大きく)すると、直進安定性が増し、逆に立てて行くと直進安定性は損なわれますが、
向きを変える時にクイックに向きが変わります。
例えば、思いっきり前輪が前に突き出した(キャスター角が大きい)アメリカンバイクだと直進安定性が良く、真っ直ぐな直線
ハイウェイ走行に適しています。しかし、その反面、最小回転半径が大きく、小回りが利かない。
逆に、あまり前輪が前に突き出していない(キャスター角が少ない)レーサータイプのバイクだと、キビキビ!クイックに
曲がりくねった道や峠を駆け抜け、最小回転半径が小さいので小回りが得意。しかし、その反面、直進安定性が低くく、
直線ハイウェイを高速で走ると、フラフラしやすく苦手。それと同じ事が自動車にも言えます。
キャスターが少ないと、クイックだけど直進安定性が低い。キャスターが多いと直進安定性が上がるが小回りが利かない。
各自動車メーカーは、その両方を生かす中間点を探って、その車両に合う「キャスター角」を決定しているって訳です。
FR車やMR車のようなリア駆動車の場合、直進安定性の多くを掌るので「3度〜10度前後。大体5〜6度」に設定されます。
FF車の場合は、進行方向を決定するフロントタイヤ自体が駆動するので、直進安定性が確保し易い。前から引っ張るんだからネ?
ハンドル復元力にも、あまり影響を受けないので「0度〜2度前後。大体1・5〜2度」に設定されています。
っが、しかし!一見FF車としては、一般的なキャスターを持たせているようにも見えますが、実際には
グレードis 前輪軸キャスター角:1°25′ Type−R 前輪軸キャスター角:1°30′
上記の柔らかいコンプライアンスブッシュがブレーキング時に前後に撓んでしまうのが原因で、
キャスター角の実数値が足りていない。
現に、私はコンプライアンスブッシュをピロ化してキャスター角を約3度に設定していますが、特別ハンドリングが
重くなる事も無く、返ってキビキビ良く曲がるし、直進安定性も格段に増えました。
HONDAもコレには気付いたらしく、テストを重ね次期マイナーチェンジ車は、多分キャスター角を増やす設定に変更すると思います。
では、何故?キャスター角を大きく設定しなかったのかと言うと、憶測ですがキャスター角を大きくすると、キビキビ感が
スポイルされると判断したのでしょう。(実際、殆ど変わらなかったのですが・・笑)
もう1つは、カタログ値のホイールベースを懸念したのでは?っと思います。キャスター角が増えれば、当然トレールが
長くなる。つまり、前後の車輪軸の距離「ホイールベース」が長くなります。
知識が少ないのに、やたらカタログデーターに拘る購入予定者が多い日本ならではの悪い風習ですが、
前車のDC2よりホイールベース数値が伸びる事で「小回りが利かない&コーナリング性能が落ちたのでは?」っと
評価されるのを嫌ったのかも知れません。
一昔前とは違って、今どきキビキビ走る要素にホイールベースは、あんまり関係無いのですけどねぇ・・。
実際、(旧インテグラ)DC2より、キビキビ良く曲がる(旧シビック)EK9の方が実はホイールベースは長いのに・・。(笑)
先程、FF車のハンドル復元力にあまり、キャスター角は関係無いと述べましたが、実際の走行では色々な要素が絡むので
一概に言えませんが、その御蔭で「ハンドル舵角が残り易く、切りコジた運転になってしまう」のは間違いありません。
ノーマルキャスター角だと、交差点でも「故意にハンドルを戻す」必要がある程です。キャスター角を増やした私の車両だと、
「普通の車と同じく、手を離せば自然にハンドルが戻る」のですから、ハンドル復元力にキャスター角の影響は少ないとは
言い切れないと思います。
とにかく、DC5R&EP3は「少しキャンバー角が足りない」っと覚えて置いて下さい。
「何故DC5Rはハンドルが重いのか?」
DC5Rに乗った方々の殆どが「ハンドルが重い」っと言います。実際、FFのパワステ装着車の割りには
重い方です。ある一定レベル以上なら、高速サーキット向けと言うDC5Rの素性通り、高速コーナーの
安定性&舵角保持には抜群なので・・・「慣れるのが一番」です。
しかし、「故意に味付け」しただけでは無く、構造上DC5Rはハンドルが重いのは仕方無いのです。
「トレッドとキングピンの関係」
HONDAのカタログ説明を見ると
「サスペンション、ハンドリング…すべてがタイヤの性能と密接に関わっています。インテグラTYPEーRも、
サーキットでのタイムアップと雨の走行性、燃費の向上などを目標にタイヤを専用開発しています。
ステアリング操作に即応するフロント、リアの動き、立ち上がりでのトラクションの掛かり具合などすべて標準の
タイヤをもとに設計しています。ですから、気持ちよく性能を引き出すには専用タイヤがいいでしょう。
サイズは215/45ZR17。キングピン角が大きくなり過ぎないぎりぎりのところまでボールジョイントを外側に配置し、
タイヤを外に張り出させてトレッドを従来比約15mm拡大。優れた操縦安定性とコーナリング性能を実現しています。」
この文章説明で注目して欲しいのが「キングピン角度をギリギリに大きくした」って所。
つまり、Type−R専用の新設計と謳ってるが、元々の汎用シャシー「グローバルシャシー」を採用してる限り
「グレードis」のトレッド幅(左右のタイヤ間での輪距離=広げればコーナリングが安定する)から広げる為に
ロアアームのボールジョイント(車体との接点)を車体の外側に配置して拡張したのである。
この手法はHONDAはお得意で、前車のDC2でも同じ手法で拡張されています。つまり、シャシーはそのままで
アームだけを伸ばして車幅を稼ぐ事で、コストUPを抑えてトレッド増大してコーナリング性能を上げたと言う意味。
しかし、この手法でトレッドを稼ぐとキングピン角度が大きくなってしまうと言う弊害が絡む。
グレードis 前後トレッド1・475m キングピン角度16°25′ 最小回転半径5・3m TYPE−R 前後トレッド1・490m キングピン角度17°10′ 最小回転半径5・7m
「キングピン角度」
キングピン角度とは、タイヤを正面から見て「アッパーマウント」と「ロアアームジョイント」を結んだ青いライン「キングピン軸」が
車体に対して内側に傾けられた角度を言い、設計理念で「4度〜20度未満」に設定されています。
つまり、ハンドルを切ると、このラインを軸にタイヤが回転する訳です。
従来タイプに比べ、ロアアームボールジョイント部を外側に張り出した為にType−Rは角度が増してるって訳です。
何故こう言う設定なのかと言うと、ハンドルを切ると角度がついたキングピン軸を支点に操向するので、ハンドルを切ると
「片側のタイヤが下がる(実際には反力で車体片側が持ち上がる)」動きになります。
この片側の車体を持ち上げた重さ分、ハンドルを直進状態に戻そうとする力(復元力)が発生する訳なのです。
直進安定性性の多くをフロント駆動力に依存し、キャスターやキャンバーの影響力の少ないFF車は、この「S・A・T」を利用して
ステアリングの直進方向への復元力の多くを発生させています。
ただ、復元力も適当でないと、旋回保持力が大きく重い操舵感になってしまう。
これが、「キングピン角が大きくなり過ぎないのギリギリのところまでボールジョイントを配置し、タイヤを張り出させた」と
言う意味。んま、それでもちゃっかり重くなっちゃってるんだけどネ・・。(笑)
(*注)上図は判り易く説明する為にディフォルメしています。実際はもっとキングピン角度もスクラブ半径も小さいです。
透視図 正面から見た図
ココで「キングピン軸」がショックアブソーバーの芯と少しズレてるのが判ると思います。どんな車でもそうなのですが、それが、
アッパーアームを持たないストラット式サスペンションの欠点でダンパーが横力を支えているため、スプリングとダンパーを
まっすぐ平行に配置した場合、タイヤストローク時にダンパーがこじりながら動くことになり、フリクションの原因となります。
この問題に対応するために、ダンパーに対して斜めに配置したオフセットスプリングという構造を採用しています。
その上、ストラット式はハンドルを切ると同時にショックアブソーバーも一緒に回転します。
だから、ダウンサスを装着してハンドルを切るとスプリングとアッパーマウントゴムのズレが生じて「ポクン」と鳴るのです。(笑)
走行には差ほど支障はありませんが、フリクションロスになってるのは、間違いありません(あはは)
「スクラブ半径(キングピンオフセット)」
上図のタイヤの接地中心点とキングピン延長上の青いラインが、地面に到達した時のラインのズレを「キングピンオフセット」又は
「スクラブ半径」と言います。ハンドルを切ると操舵するサスペンション構成部のキングピンの延長ラインを軸にタイヤが回転します。
んで、実際に路面に接してるタイヤの中心軸ラインとズレが生じます。これが「スクラブ半径(キングピンオフセット)」と言います。
実は、ハンドル操舵してる軸と、実際のタイヤが回転する軸にはズレがあるって意味です。
判り易く説明すると、タイヤの静止した状態でタイヤを左右にクルクル回すと、タイヤ面に円状に擦った跡が残る筈ですよネ?
普通の人なら、タイヤの真ん中を中心に円状に擦った跡が残るように思う筈ですよネ?
しかし、実際にはタイヤの中心から少し「ズレた軸を中心に円状に擦った跡」が残ります。
つまり、タイヤの中心でハンドル操舵してるのでは無く、サスペンションを構成している中心軸=キングピン延長ライン上を軸に
ハンドル操舵してるって訳です。つまりタイヤ中心(車体が実際に設置してる地点)と操舵してる中心のズレ分、曲がる時に進行方向
に抵抗が掛かっているのです。
コレが多いと進行方向と操舵方向にズレが生じるので無理が掛かったり、タイムラグが発生する。その矛盾のズレが原因で
「トルクステア」が発生してしまう。操舵性能が落ち、とてもコーナリングマシンから遠ざかってしまいます。
このズレ=「スクラブ半径」が小さいと、円形に擦った跡(操舵軸)がタイヤセンター中心(進行方向回転軸)に寄って小さくなり、
タイヤを引きずる量が減り、引き摺る抵抗力が減ってハンドリングが軽く出来る。
しかし、実際にはタイヤやホイール、ブレーキキャリパー&ローターが邪魔でサスペンションを構成するアームやジョイントの
スペース確保が難しく、レイアウトに制約が多いし、設計段階で各種の概念があるので一概に同じ考え方とは言えません。
パーツを変更すると設定バランスがグチャグチャになってしまう。
上図を参照に想像すれば判りますが、アッパーマウントとロアアームとの位置関係でキングピンアングルが決定され、その延長線で
スクラブ半径が自ずと決定される。っと言う事は、ホイール幅を変えて、オフセットを浅くしたり、(フェンダーに納める事を前提に考える
ので、ホイール幅を広げると当然オフセットを浅くしないと履けませんよネ?)タイヤサイズを変更したり、アッパーマウントでキャンバー
を付けたり、厳密に言えば、車高を変えるだけでもキングピン角度が変わってしまう=スクラブ半径が変わるのです。
だから、HONDAのカタログ解説に、わざわざタイヤサイズを強調して指定してる訳です。
車高調に変更するにしても、ホイール1つ変更するにしても「折角、メーカーが苦労して設定したベストな値をグチャグチャにしてしまう」
っと言うのを忘れないように。また、そのバランスを再構築する場合の目安&方向性として配慮するのも大事です。
ポジティブロールラジアス(ポジティブスクラブラジアス)
一般的な構成で、FRや一般的なFF車に多く採用されていて、キングピン軸延長上のラインが地面に到達する点が、
タイヤの中心線より内側に来る場合。
つまり、操舵軸が接地中心より車体内側に設定されてる事を意味します。(上図も同じ)
単純にタイヤセンターが車両が前に進む回転軸、キングピン軸が曲がろうとする軸だと表現すると、
この場合、曲がろうとする方向の軸より、外側に真っ直ぐ走ろうとする方向の軸があるので上回り、ハンドルの直進復元力を
生みます。FF車はハンドル復元力の多くをこれに頼っています。また、タイヤが回転しながら向きを変える作用が加わり、
ハンドル操舵が軽く設定出来ます。
ポジティブ側に来ると言う事は、大抵キングピン角度が立ってるので、路面からの外力がモロにステアリングBOXに
伝わるのが欠点。
ネガティブロールラジアス(ネガティブスクラブラジアス)
逆スクラブとも呼ばれ、極端にキングピン角度の傾斜を強め、キングピン軸延長上のラインが地面に到達する点が、
タイヤの中心線より外側に来る場合。
安全配慮から最近のFF車に良く採用される設定で、前車DC2を含めHONDA車も多く採用しています。
悪走路や万一、前輪片側タイヤのパンク&バースト等を起こした場合でも一方のタイヤが内側に行こうとする力を、
もう片側タイヤも内側に行こうとして、御互いに相殺しあい直進性が保ちやすいと言うのが利点。
ゼロスクラブ
キングピン軸の延長ラインとタイヤの中心軸がピッタリ同じになり、皆さんの想像通りに「タイヤの中心を軸に走行して操舵もする」
一番、抵抗も少なくブレーキングや突起乗り越え時に、キングピン軸を中心にした車輪の首振りが理論上ゼロになるので、
どの速度域でもハンドリングが安定する。
厳密に言えば、スクラブ半径を全くのゼロでは無く、多少とった方が転がりながら回転するので、ステアリングが軽くなる。
大き過ぎても、ゼロでもダメ。んま、言ってみれば一番の理想は「ゼロスクラブ半径に限り無く近い」がベストなのです。
理想的なスクラブ設定
DC5の場合は、殆どゼロに近いポジティブスクラブで大体、平均すると約4・5mmポジティブに設定されています。
ゼロスクラブに近付けつつ、FF車のハンドル直進復元に欠かせないS・A・Tを僅かにセッティングしたのだと思います。
これ以上、ロアアームジョイントを外に出すと、キングピン角度が付き過ぎて(ただでさえ少ない)ハンドル復元力が落ちて、
トルクステアが発生してしまう。ステアリングBOXに掛かる負担も多くなる。実に微妙&絶妙なバランスで設定されている訳です。
だから、開発当初、各ショップが挙ってギリギリ履ける限界の「245サイズ」を選んでいたのに、最近では「パワーが喰われて
トルクステアが出やすいので235サイズまで」に留めているのは、皆さんもご存知ですよネ?
<注意点>
DC5の参考スクラブ半径は、メンバー各位の車両&同一計測方法にて約10台以上を測定した平均値です。
少ない場合では3mmに満たない車両もありましたし、多い車両は7mm近くある場合もありました。
これは、ホイール変更や、車高調&キャンバー変更&事故修復歴に大きく影響され、測定場所の水平や測定車両の
停車方向(バック停車&前進停車)でも変化しますので、あくまで目安として考えて下さい。
決して、製造組み付けの精度が低い訳でも何でもないので、勘違いしないように。極めて車両固体差は他社より少ないです。
また、キャンバーを付けてる車両だと、タイヤ自体が傾きますので、タイヤセンターには正常な接地面圧が掛かっていません。
必然的にキャンバーをネガティブに付けてる場合なら、接地点はネガティブになり、正確に仮想キングピン角度を測定する方法は
ありません。(ポジティブでもネガティブでもゼロスクラブでも、ポジティブ側に円形傷跡が残ります)
太いタイヤ&ホイールサイズを履いたり、車高を極端に落したり、キャンバーを付けたりすれば間違い無く、ネガティブスクラブ
となり、トルクステアが発生し易く、また、各部に無理が生じ各部のパーツ消耗やタイヤの発熱&磨耗が早くなります。
また、設計段階でキングピン角度&スクラブ半径が決定されていますが、出荷時&ディーラーでのアライメント測定は
「サイドスリップ(トータルトー角)」での測定しかされません。
つまり、アライメント調整時には、直進性に多く影響するトーを重要視適正に合わせる(っと言うかノーマル車はトー角しか調整
出来ません。笑)ので、トー角&スクラブ(キングピン角度)両方を正確に合わせるのは不可能に近いし、
実際の一般走行にスクラブ半径の影響があまり無いので、そこまで厳密に測定してないのが本音だと思います。
逆に言えば(ノーマル車であれば)トー角の適正化の方が数倍重要で、さほど影響無いのでしょう。
「あとがき」
欧米車は、とかくアライメントに拘りたがりますが、それは、日本自動車メーカーよりも製品精度が低いのが一番の原因だと思います。
道路を走る限り、どんな車両にも大事なアライメントです。
日本人のドライバーも整備工場もアライメントに無頓着でガタガタなアライメントのまま平気で走ってたり、修復の際に考慮が
足りなかったり・・・・勝手に誤ったチューニングを施し、知らずにバランスを崩してしまったり・・・欧米に比べアライメント認知度が低い
ですが、日本車は、それ程(欧米車と比較すると)精度は低くない。アライメントの崩れ方もそんなに酷く無いのが一般的です。
例え、貴方が神経質にバッチリに全てのアライメントをシッカリ測定&調整したとしても、コンビニに入る時に歩道に乗り上げたり、
駐車する時に、車輪止めに少しキツク当たって停まるだけでも、簡単にアライメントは崩れます。接触事故を起こせば無論・・。
事故しなくても全開サーキットで高Gを与えたり、縁石に乗ったり、スピンするだけでも、微妙に狂ってしまいます。
また、そこまでのmm単位の微妙なアライメント変化に気付くほど、一般オーナーのテクニックが高いと言えないと思います。
しかし、アライメントと言うのは、車体と路面と唯一の接点「タイヤ」がどう接地しているか?つまり、車の良し悪しを左右する重要な
チェック&調整項目です。微妙な変化でも「何と無く変?」っと気付く繊細な感覚と、疑いだしたら、何にも異常が無いのに
妙に気になったり・・・っと言うのが人間(ドライバー)の感覚。
「軽視せず、しかし、あまりにも拘り過ぎない」っと言うスタイルが一番良いと思います。
例え、水平な環境でバッチリに調整した所で、実際に走る路面は凸凹だし、コーナリング等で色々変化しますから・・(~~;)>
しかし、「軽視してはならない」っと言う事を覚えて置いて下さい。
購入したオーナーと言うのは、殆ど皆さん同じ所得&価値観が多い。「俺には余裕があるよ?」って人ならもっと高価な車両を
買う筈ですから・・・誰でも少し背伸び気味なのが普通。(笑)
その上、車高調やホイール等のチューニングパーツを選ぶ際も、予算ギリギリの欲しいパーツを買うのが普通ですよネ?
DC5&EP3の場合、何を変更するにもアライメントが大きく変化するので、アライメント費用も馬鹿に成らない。
コマメに調整すれば、それに越した事はありませんが、約2万円近く掛かるアライメントを月一回ペースで調整するのは辛い。
あまり軽視せず、しかし最低半年に一回は調整すべきだと思います。また、新たにチューニングパーツに交換したり、
変更した際にも調整すべきです。また、車高調を購入する場合、必ずアライメント調整が必要なので、その費用も考慮に入れましょう。
(車高を変える=ダウンさせると、ほぼ確実に極度にトーインに変化して、まともに走れなくなります。アライメントは必須です。)
チューニングに関しても、スクラブ半径を優先させるより、走行条件に見合ったキャンバー&タイヤ&ホイール幅を最優先に
考慮すべきだと思います。結局は「机上の理論より走ってナンボ」ですからネ?(あはは。それを言ったらミもフタも無いですが。笑)
このページは、皆さんに「机上理論の細かい事にゴチャゴチャ拘る」ドライバーになって欲しい為の知識ではありません。
皆さんには、より構造理解を深め、純正が如何にバランス良く設計されているかを理解して頂き、また、チューニングする際には、
「折角のノーマルのベストバランスを崩してしまう」覚悟を持って欲しい。
又、プライベートでセッティングする際の方向性を見極める上での参考に成ればと考えております。
もし、ココまでで(構造に関して)理解出来ない部分があったり、貴方の車両に思い当たる症状を体験出来なかったのであれば、
それは、DC5が悪い訳でもパーツが悪い訳でも無く、貴方自身のテクニック&知識が及ばなかったと言う意味です。
「ノーマルの素性を生かして・・」とは「ノーマルの良さ&構造を良く理解する」事なのです。そして、全てを理解した上で
貴方なりの素晴らしいチューニングを目指して欲しいと願います。