鋳鉄の材質

  1. 鋳鉄とは
  2. 鋳鉄の成分
  3. 鋳鉄の特徴
  4. ねずみ鋳鉄の種類
  5. 鋳鉄の顕微鏡組織
  6. JIS規格と組織
  7. 鋳鉄の組織図
  8. 球状黒鉛鋳鉄

(1) 鋳鉄とは

 鋳鉄とは、鉄、炭素およびケイ素からなる鉄合金の名称であって、一般に鋳物によって製造されるものです。普通はこれらの元素のほかにマンガン(Mn)、燐(P)および硫黄(S)などが不純物として含まれています。また特殊な用途の目的のためクロム(Cr)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、パナジウム(V)、チタン(Ti)、などが合金元素として添加されることがあります。
 鋳鉄は鋳物の中で最も多く生産されている金属材料です。材料による分類を図1に示します。 


 鋳鉄の分類はこのように複雑で、球状黒鉛鋳鉄が発明されるにおよんでますます複雑になったが、これが鋳鉄の用途開発に大きく貢献し鋳鉄の良さが認識されるようになったことも事実である。
 日本での材料別生産量を図2に示します。

 このように中でも95年度は、徐々にその生産量が増加し景気回復の兆しが確認されています。鋳造品の中で鋳鉄鋳物が最も多いのは鋳鉄の用途の多用姓と他の金属に比べて安価に入手できることがあります。

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(2) 鋳鉄の成分
 
鋳鉄に含まれている5元素はどの程度あるのか、またどのような働きをするのか見てみましょう。
 各元素の含有料を表1に示します。 

表1 各元素の含有料

元素 含有料

Si
Mn

2.5〜4.0%
0.5〜3.5%
0.2〜1.2%
0.03〜0.8%
0.01〜0.12%


  各元素の性質

1 炭素 (C)
  ケイ素(Si)と関連して性質を変えます。Siが約1%以上でCが増すと、強さと硬さが減少し湯流れを良くします。(普通の場合)Siが少なくてCが増すと  硬さが増します。(白鋳鉄の場合)Siが増すと強さ硬さが減少し湯流れが良くなりまます。

2 Mnは強さをいくらか増します。硫黄の悪影響を減らします。

3 Pは硬さを増し湯流れを良くします。

4 Sは材質を脆しく健全性を害します。


 これらの作用が組み合わさって微妙な変化をします。成分調整の際はそこを良く見極める必要があります。たとえば重要な機会鋳物の場合では、強度をかなり重要視するので湯流れを悪くしない程度にC、Siを低め

C  : 3.  0〜3. 3%
S@: 1.  5〜2. 3%

の範囲に抑えられます。このように使用目的の応じて目標成分を決めることが溶解の基本となります。

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 (3) 鋳鉄の特徴
 1 鋳物が作りやすい
 2 湯流れがよく凝固時の収縮が少ない。
 3 対摩耗性に優れている。
 4 加工性に優れている。
 5 腐食に強い。
   欠点
 1 粘りがないので衝撃に弱い。(普通鋳鉄の場合)
 2 酸などに腐食されやすい。
 3 引っ張りの強度がやや不十分である。
 4 肉厚感度に影響される。


 (4) ねずみ鋳鉄の種類
  ねずみ鋳鉄はその成分含有量や溶解作業の仕方によりその性質は異なります。この分類にはJISに従うのが便利です。
  表2にねずみの鋳鉄のJISを示します。 

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 (5) 鋳鉄の顕微鏡組織
 1 黒鉛
   ねずみの鋳鉄は黒鉛が含まれているところにその大きな特質を見いだすことが出来ます。黒鉛の存在の利点と欠点は下記の通りです。
  利点
   (1) 黒鉛の晶出は凝固時に膨張し、収縮が小さく鋳造しやすい。
   (2) 片状黒鉛は振動吸収を高める。
   (3) 耐摩耗性、とくに潤滑摩耗に良い。
   (4) 耐圧縮強さが強くなる。
   (5) 繰り返しの急熱に耐える。
   (6) 耐食性に強い。
  欠点
   (1) 黒鉛の強度は2kg/muと非常に弱り。したがって鋳物の強度を低下させる。
   (2) 塑性加工を妨げる。
   (3) 硬さを低下させる。
     鋳鉄中の黒鉛はその形状、大きさ、分布などが鋳鉄の性質ときわめて密接な関係にある。
                                   黒鉛の立体構造を図3に示す。


2 黒鉛の携帯と分類
  片状黒鉛鋳鉄の黒鉛形状の分類を図4に示します。


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黒鉛の形状の分類を表3に示します。


黒鉛の分類 黒鉛の形状分布 特徴その他
A型 均一に分布し方向性がない。
大きさもほぼ同じ形状を示します。
一般の片状黒鉛で良好な組織
B型 ばら状黒鉛、中心部に小片状黒鉛、
それから放射状に大片状黒鉛があります。
中心部にフェライドが析出しやすい
C型 過共組成の黒鉛で、粗大なキッシュと小型の
片状黒鉛が共存します。
非常に脆い。破面がとくに粗い。
D型 デンドライとの間に細い黒鉛が晶出しています。
通常共晶状黒鉛といいます。
基地にフェライドが析出しやすい。
急冷された場合には析出しやすい。
E型 デントライトの間に片状黒鉛が晶出し、
方向性を持っています。
低炭素量の時に出やすい。
強さは大ですがたわみは小さい。


3 セメンタイト
 鉄3原子と炭素1原子が結合してできた化合物です。Fe3Cをセメンタイトといいブルネルの硬さは800以上もあります。この数値は金属材料の中でも最高の分類に属します。ねずみ鋳鉄で表面がチル化して切削加工のとき削れないという苦情を経験したことがあると思います。これはいうまでもなくセメンタイトの影響です。

レーデブライトの組織は多量のセメンタイトが主体になって
いるためきわめて硬いです。白鋳鉄はこのレーデブライトと
パーライトの混合組織です。
図5にレーデブライトの組織を示します


フェライトは727℃で生じた固溶体で、ケイ素の
全部、マンガンの一部、それにごく少量の炭素を
含んだ鉄をいいます。
フェライトは軟質で弱いですが、実用鋳鉄では
ケイ素を固溶しているところからシリコフェライトと
呼ばれ、ケイ素量が増すと次第に硬くなります。
機械的性質は下記のとおりです。
   引っ張り強さ 35〜45kgf/mu
   ブルネル硬さ 70〜180
図6にフェライトの混在する組織を示します

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 727℃以下の温度で析出したフェライトと二つの結晶は
板状で、しかも交合に重なり合った構造をとっているため
縞状または層状として観察されます。
 図7にパーライトの組織を示します。
このようにパーライト組織は軟らかい組織と硬いセメン
タイトのそれぞれの組織がうまく組み合わさっており、
大体の性質はつぎのとおりです。
   引っ張り強さ   50〜80kgKgf/mu
   ブリネルの硬さ 170〜330

 

 鋳鉄は1145℃で凝固するのは厳密に言いますと鉄、炭素、
ケイ素の3元系についてのことですから、リンはこのとき
まだまだ溶けています。その後リンの濃くなった残液は
共晶細胞の周辺に集まり950℃の温度で凝固します。
したがって凝固収縮を補うことが難しく引け発生の
おそれが発生します。
  図8にステダイト組織を示します。
ステダイトはセメンタイトの次ぐ硬さをもちそのブリネル硬さは
400〜500程度で耐摩耗性が向上します。


  硫化物(Mns Fes)
 鋳鉄中にMnがあるとSはMnSとなります。この際Mnが0.6%以上あってSが少ない
場合はFeSは殆ど存在しなくなります。反対にMnが少なくSが多いと、FeSが現れま
す。MnSは凝固点が高く、湯の中ですでに固体の結晶となって分散し、凝固後も基地
中に一様に分散するので材質に悪影響をあたえません。
 しかし、FeSは凝固点が低く、鉄、炭素系共晶凝固温度とほぼ等しいので、共晶細胞
の周辺に集まって凝固し、細胞同士の結合を弱めます。そのために材質が脆くなります。
また黒鉛の晶出を阻害する作用もあるので注意を要します。

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(6) JISの規格と組織
 
1 黒鉛の分布と破壊

 組織で問題とされるのは、鋳物の強度に関係のある黒鉛の量、大きさ、形状と分布であることはすでに述べました。
 黒鉛の形状は大きな片状が多量にあるものは弱く、湾曲して小さい黒鉛組織を有するものの方が強度があります。

 破壊は図10に示しますように、黒鉛の先端が基地に対して
切欠き効果を与えることによって進行されると見られるので、
鋭角な黒鉛よりも芋虫状、球状になったほうが強いことは当
然です。


 2 化学成分と黒鉛組織

 図11の(a)の方が黒鉛量も多く形状も大きいので機械的
性質は低下します。

 3 冷却組織と黒鉛組織

冷却速度の小さい直径の太い試片ほど黒鉛
片は粗大に発達しており、同時に機械的性
質も低下します。


 以上のような黒鉛組織のほかに、基地も鋳物の材質にかなりの影響を与えます。この基地もやはり化学組成、冷却速度の影響を受けることは言うまでもありません。


 4 FCのJISの規格と組織の関係
 使用する材料が適正でしかも溶解操業正常であれば、その鋳物の破面と組織には、ある程度の関連性があり、またこれに対応する化学組成、機械的性質その他の性質などのにも関連が認められます。
 以上30mmФ試験片での、JIS種類別組織を図13〜15に示します。

破面は粗い、粗大な棒状の黒鉛が多量に見られ、C型に属します。時にはバラ状が混在します。パーライト地にフェライトが混在します。
C、Siともに高いようです。

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破面はかなり細かく黒鉛は小さく湾曲しています。A型黒鉛が好ましいですがE、B型の混在することもあります。パーライトが主流です。C3.2〜3.4、Si1.5〜2.2%位が標準です。



破面は凹凸が激しく、むしりとられた感じがします。A型黒鉛が均等に分布し大きな片状黒鉛はありません。パーライトも細かくCは3.2以下です。Siは1.5〜2.0です。

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(7) 鋳鉄の組織図

 組織図は材質の変化を示すもので、基地にパーライト鋳鉄を得るためには、C、Si、冷却速度をどのように選んだらよいかを決めることができることです。以下これらの関係を図22〜25に示します。

 1 C、Si量と組織の関係

図中Uの点線がパーライト鋳鉄の範囲であり、C、Si、量によりそれぞれの組織が示されています。
 C量が2.7〜3.4%が機会鋳物の適正組成範囲であり組織との関連性を示唆します。

2 C、Si量と冷却速度の関係

C、Siと同程度に組織を左右するものとして冷却速度、言い換えると製品の肉厚があります。図23にその代表的関係を示します。Uの分野がパーライト鋳鉄となります。

また図24では、肉厚120mm、までの鋳鉄の組織とC+Siの関係を表したもので、Uの分野がパーライト鋳鉄です。

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3 炭素飽和度と冷却速度の影響
 図23〜24では、冷却速度の影響を1つの図の中に表すためにCとSiを量的に同じに取り扱い、単なる和として司式への影響を考えたのであるが、実際には組織に及ぼすSiの影響はCに比べて少ないもので、Cと同じに考えて組織への影響を決めることは不正確です。例えば、C2、8%、Si1、5%の場合とでは(C+Si)%が同じであっても、前者の方が白鋳鉄になりやすい傾向があります。 シップは以上の理由でCとSiを量的に同一視せずに炭素飽和度の考え方を取り入れて図25を作成しました。


 図25は肉厚50mm以下のものについて種々の文献や実態から得られた組織図です。
このようにすればSiの影響はCの約1/3程度のなり実際に近くなります。


(8) 球状黒鉛鋳鉄
  普通鋳鉄では黒鉛が片状に晶出しており、伸びもなく、脆くて衝撃力に弱い欠点を有していましたが、ある程度これらの欠点を補った鋳鉄が球状黒鉛鋳鉄です。
 球状黒鉛鋳鉄はダクタイル鋳鉄と呼ばれ、過共組成の鋳鉄溶湯にMg、Ce、Caなどの合金またはこれらの化合物を添加し、鋳放しで黒鉛を球状化させたものです。
 1948年、ミルズという人がフィラデルフィアで発表したものです。以下球状黒鉛鋳鉄をFCDと省略して、JIS規格と黒鉛形状を図26に示します。



                             材質別、製品肉厚と化学組成

規 格 厚みmm Si Mn
FC200 6
20
25
70
3.50
3.45
3.40
3.35
2.60
2.50
2.35
2.10
0.60
0.60
0.80
0.80
0.05
0.05
0.05
0.05
0.02〉
0.02〉
0.02〉
0.02〉
FC250 6
3.
70
3.30
3.25
3.20
2.10
1.70
1.50
0.75
0.80
0.90
0.05
0.05
0.05
0.02〉
0.02〉
0.02〉
FC300 6
30
70
3.15
3.10
3.00
1.70
1.60
1.35
0.90
0.90
0.90
0.05
0.05
0.05
0.02〉
0.02〉
0.02〉
FC350 20
45
65
100
3.05
3.00
3.00
3.00
1.05
1.04
1.30
1.10
0.85
0.90
0.90
0.90
0.05
0.05
0.05
0.05
0.02〉
〉0.02〉
〉0.02〉
〉0.02〉

資料は濱田先生に提供していただきました

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