21世紀に鋳物企業が求める人材

1 企業現状の実態
現在、日本経済が直面している不況は決して生やさしいものではないと思われます。規模の大小、業種を問わず、どの企業もなりふり構わず必死にリストラを推進しないと、このままではもたない!倒産の恐れがある!との厳しい判断に追い込まれているように思います。この厳しい情勢を切り抜けられるか、それは第一に経営者の判断に、さらにその企業で働く従業員、つまり私たちの行動にかかっています。のんきに日を過ごせる悠長な次期ではないことを、さらに将来も厳しさか続くという判断にたって、情勢を考え、行動の方向を見定めなければならないと理解する必要があると思われます。このような状況下であるべき企業の人材像を熊なりに模索してみました。
2 世界情勢の大きな変化
20世紀と21世紀、一言でこの違いを表現しますと、「戦争と革命」の時代から「平和と安定」の時代への転換であると思われます。
従って現在では、あらゆる価格が右肩下がりに下落を長期にわたって継続する状況の中では、企業の経営は基本的に右肩上がりのインフレ時代と180度異なるものにならざるを得ません。
極端な表現をしますと、インフレ時代に重ねてきた経験、あるいは常識も、デフレ時代においてはすべて情勢を判断するさいの準備にも、また行動、あるいは今後の必要人材の選択基準に対しても、何の役にもたたないどころか、むしろすべてにおいて新規考慮し対応していかなければならないような気がします。
3 企業経営に必要な条件
企業経営に欠かせないものは、ヒト、モノ、カネ、情報の四つがあげられます。なかでも重要なものはヒトと思います。
なぜ?といいますと、その他の三つは、ヒトがどうかかわるかによって、その他の三つの価値を変えることが出来る可能性があるように思うんですが?
とくに付加価値の高い製品やサービスを生み出していくには、上記のモノ、カネ、情報といった経営資源をどのように組み合わせていくかが課題となるでしょう。これをコーディネートするのがヒトではないでしょうか。ですから、デフレ時代での人材の選択では過去のインフレ時代とは大きく異なるのではないでしょうか。
4 二十一世紀人材の必要条件
4.1 非価格競争力の必要性を理解できる人材
21世紀の民間企業の競争力を左右するものは、価格の下落、価格破壊も大きな流れですが、それ以上に
(1) 製品の品質とその性能の違い
(2) 信頼性
(3) 確実な納期
が大きな選択の要因になると思われます。
4.2 価格革命へ対応可能な人材
でも、一方では非価格競争力に無関係に、物の価格低減を要請される場合があります。その場合、従来のような適正価格は「価格+利潤」というような受注は不可能で思い切った発想の転換が求められます。すなわち、価格からではなく、売れる価格から発想します。いくらなら売れるか、そこから出発してかかった費用、つまり原価のほうを価格に合わせるという作業が必要になると思われます。この場合売値を高い方に考えるのではなくて、安い方に考えます。そうしないとデフレの波に乗れません。そうして、その価格でどうすれば造れるか、利益を上げられるか、考えなくてはいけないのではないでしょうか。このような逆転の発想で対処することも今後の価格決定の基本になっていくことも十分に考えられ、柔軟な発想を持つ人材が必要となります。
4.3 デフレ時代の指揮官(管理職)の条件
企業はヒトといわれますが、不況のときこそ決定的だと思われます。企業にとって好況が平和で不況が戦時ではないでしょうか。
管理職をリストラするのは、単なるヒト減らしではありません。今は戦時ですから、戦闘指揮官がはっきりしていなければなりません。管理職をごく少数に絞って、個人に権限を集中し命令系統を明確化します。敵前でいちいち会議なんかしていたんでは敏速な対応が出来ません。戦えません。
その指揮官(管理職)の資質は強い個性の人でなくてはなりません。
すなわち、なにごとも自分の判断を持ち、どんな場合でも臆することなく主張できる人材でなければなりません。指揮官(管理職)は、判断が早く、声も大きくて、郡を抜いて目立つようでないと組織を動かせないと理解しています。
(1) 個性化とは
個性化とは辞書を見ますと「個人に備わったと固有の性質」と示されています。ご存知のように人それぞれに顔、形が違うように物の考え方も違って当然です。この違った考え方で、またそれぞれ違った才能の人たちが集まっておられるからほんとの面白い。これを生かさなかったら宝の持ち腐れであり企業の個性化はあり得ません。この違った考え方を潮流に迎合されることなく積極的に提言する姿勢が必要です。しかし、現実は例えば意見具申をした場合でも「誰々部長が考え方に否定的だからこの件はノー」と一歩引き下がる傾向があまりにもはびこりすぎ、またついつい「出る釘は打たれる」を避けて自己の考えを主張せず「上司の指示待ち」の姿勢となり個性の意見は没となりがちです。要は過去の常識を否定し、また新しい各自の柔軟な発想に期待されているのではないでしょうか。
これらに即対応できる人材だけが高い評価を勝ち取ることが出来るという認識にたって、個性を生かした経営を可及的速やかに導入することが絶対に必要だと思われます。
古い価値観を守るより、新しい価値観を生み出すことが絶対条件です。また自らの長い経験と同時に、またそこから生まれてきた固定観念にとらわれる限り競争に敗れ自然淘汰されていくという認識を持つべきだと思います。
また、会社の方向性を受け、自分は何をすべきか、何をすれば会社に貢献できるかを常に考えて行動すべきではないでしょうか。今までこのような思考で行動してきたんだろうか。
「このままではいけない」「もう少し上をめざそう」という独特の危機感、あるいは向上心もって行動できる、事に当たれる、ヒトになりたい!
今後はプロセスよりも結果が重要視されます。「結果は必ず出すから俺に任せてください」ぐらいの姿勢を持ちたい。もちろんそこには責任感が伴いますが。
部門や立場の垣根を越えて、「会社のために」活発な議論が展開され、時にはぶつかり合いながら、それを乗り越え同じゴールに向かって邁進したい。
人材はエネルギーです。何でも言いたいことが言える、燃えるような気概を持った工場に雰囲気を変え、人も含め過去からの転換を図っていくべきではないでしょうか。
インフレ時代に正しいとされていた慣行、あるいはその集積ともいうべき常識は、一切その効果を失いました。この変化の中で生きるためには日々革新的でかつ創造的でなければなりません。絶えざる革新と創造こそ目標とすべきではないでしょうか。ですから、従来と変わらぬ硬直した発想しか出来ない人材は、もはやリストラの対象にならざるを得ないのでは?
終身雇用、年功序列、平等主義に甘んじていてはなりません。
(3) 技術の研究開発と新製品開発の可能な人材
競争に勝ち抜く条件として、技術者として高度な専門知識に邁進していることは当然ですが、さらに一段と品質、性能、信頼性高い製品の開発はもちろん、今までになかったアイデア、または発想を盛り込んだ新しい製品の開発が要求されます。これに対応できる人材の確保もまた重要だと思われます。
鋳物業界においても、これらの鋳物製造技術として従来考えなければならなかったプロセスが開発導入され話題になっています。
一方、省力化の分野でも、例えば画期的な製鋼技術が開発がなされてきました。
すなわち (1) 溶けた鋼が直接薄板を生産する技術
(2) 鉄鉱石から先哲を経て鋼に変えていくという伝統的なプロセスを改革して、いきなり鋼を生産する技術の研究開発はすでに成功しています。
これらのことから日本の鉄鋼メーカーは文字どうり世界最低のコストで、大量生産する能力を発揮し、これらによって世界の鉄鋼市場で圧倒的に優位な競争力を確保しています。
つまり、一つの作業工程の中で何肯定もの省略を可能とし、大きなコストダウンにつながりました。
一方、鋼の生産に必要なエネルギーとして石炭の消費量を見ますと、かつて19世紀当初では、鋼1トンに対して石炭30トンといわれました。これが19世紀末では5トンになり、さらに20世紀も90年代に入る頃には、ほぼ1トンでですむという大幅な「省エネルギー」が実現しました。これも徹底した「技術革新」すなわち新技術の導入がこうした思い切った「省エネルギー」をバックアップしてきたからにほかなりません。
(3) その日本の技術水準の高さを示唆する製品としてのその一例です
(A) 工作機械の精度の高さ
(B) LCD(液晶ディスプレー)の開発。パソコン、カーナビゲーターの表示装置
航空機の「バイタルバーツ」
(C) ICBM(大陸間弾道弾)のロケットエンジン用耐火物。1800度、200気圧に耐える耐火物
(D) 高炉用耐火物。 16年間長期操業樹立(湯だまり部に使用)
(E) トランスファーブレス。何台かのプレスを連結して一気に車のボディーになる鋼板打ち抜き設備の開発
資料は濱田先生に提供していただきました