プロとアマチュア


 プロの野球選手とアマチュアの野球選手のどちらが技術的に上手いかと問われたら、プロに決まっています。
ところが、プロのマジシャンとアマチュアのマジシャンのどちかが技術的にうまいかと問われたら、答えはかなり微妙です。
「一部の」という一言を付け加える事ができるのなら、アマチュアの方が技術的に上でしょう。

 決定的に違うのはプロはお客さんを喜ばすことに徹していることです。
私の知っているアマチュアのなかにも超絶技巧を身につけている人がたくさんいます。しかし、その人たちがみんなマジックを楽しく見てもらう術を身につけているかといえば、そうでもないのです。それどころか、べつに見せようと言う気さえあまりない人が多かったりします。

 アマチュアはそれが特権なのです。お客さんを喜ばせるより、まず自分が楽しくなければ趣味といえません。だから、技術にこだわる人は技術にこだわるし、道具にこだわる人は道具にこだわります。衣装にこだわる人だっているでしょう。そのこだわりの基準は、あくまで自分が納得できるかどうかです。技術にこだわる人にとっては、誰も真似できない技法を駆使して見せるマジックを演じられることが無上のよろこびで、マジック仲間から「すごい!」といわれることがなにより幸せです。それでいいのです。すばらしいことです。

 ところがプロはそうはいきません。失敗は許されませんし、道具の消耗も最小限にしなければなりません。一般のお客さんに同じ効果を上げることができるなら、失敗のない簡単な方法を使いますし、技法の習得にかける時間があれば、見せ方の工夫に使うはずです。

 プロは、わかりやすくマジックを演じて、お客さんを喜ばせるという点に関しては、徹底しています。アマチュアの集まりではみんな新ネタを持ち寄りますが、プロは同じ手順を何年も使います。それがお客さんを喜ばせるものであれば、それでいいのです。

 このプロとアマチュアの歴然とした違いが、マジックを進歩させてきたとも言えるでしょう。
そして、最後に、プロは、自分の演技にどうしても必要な技法は、それがどんなに難しくても完璧に身に付けています。