はい、はい。ええ、わかりました。その件については本人にそのように伝えておきます。
カルロス、電話の用件はなんだ?またラジオの出演か?
いや、その反対だ。ラジオ番組の打ち切りが決まった。
なんだと!?まだ6回目だぞ。間違いじゃないのか。
カフーがDJを務める番組が始まるそうだ。
あんなヘディングもできんグズに!オレはペレだぞ!!局の連中をここに連れて来い。
そう興奮しないでくれ。もう21世紀だ。キングペレは20世紀の伝説だ。我々の時代ではなくなったんだ。
カルロス・ペドロの手記より抜粋
2002年のワールドカップでひとまず盛り返したペレの名声も3年が過ぎた今では勢いを失っている。テレビ、ラジオの番組が打ち切りになり、現役を退いた元セレソン達がペレのポジションを奪ってゆく。日々、ペレに対するリスペクトが薄れているように感じるのだ。ブラジルのサポーターの間ではマラドーナブームが起きている。マラドーナはブラジルでミネラルウォーターのCMに出演し、セレソンの一員となってブラジル国家を歌うという離れ業をやってのけた。インパクトは絶大だった。ペレが「10番の夜」に出演したときよりもブラジル人が拍手喝采している。ますますペレは腐ってしまい、私には収拾が付けられない。もっとも、ペレ自身にも問題がある。かねてからペレには7人の子供がいると言われてきたが、さらに2人隠れていたことが判明した。総勢9人。孫も授かっているので、毎年3月の決算期の養育費がシャレにならない。ペレ財団の運営経費も底を尽きた。
マーベラのガキがはらみやがった。金が掛かる。
またか。もう金は無いぞ。一体どうするつもりなんだ。
解らない。私にも解らないんだ。世界中を渡り歩く内に知り合いが増え、気が付けばガキも増えていやがった。サッパリ解らん。
このままではキミは破綻してしまうぞ。
己の過ちは反省しているよ。
カルロス・ペドロの手記より抜粋
いつものように追い込まれた私達は数時間に渡って考え込んだ。こういう時、ペレの集中力の高さに脱毛する。ペレは突拍子もなくアイデアを出すんだ。想像力の違いを見せ付けられているよ。おかげで私の頭はこの通りさ。
なぁカルロス。次のワールドカップで歴代チャンピオンがパレードするのはどうだ。
カルロス・ペドロの手記より抜粋
"こう切り出したのはペレだった"。2006年のワールドカップ開幕セレモニーで、歴代ワールドカップチャンピオンがパレードする。夢のような演出だ。スコアブックに刻まれた名手たちがカメラの前に集結するんだ。世界中のサッカー関係者が感動の泪を流すだろう。それに、ペレは3回のチャンピオンだ。キング・オブ・キングスとして、再び人々は生ける伝説ペレに目を向けることになる。今のサッカー界には金が溢れている。タイミングもバッチリだ。稼げるだろう。グッドアイデアだった。私は直にFIFAにいる友人達にコンタクトを取り、ペレの企画意図を伝えることにした。大会組織委員会のベッケンバウアーは大賛成だったよ。彼にも3人の隠し子がいたからね。ベッケンバウアーが欧州のチャンピオンを、ペレが南米のチャンピオンを、2人で集めると約束したんだ。
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