This is real Pele's story. He is fighting. The enemy is Maradona.
この物語は50%のノンフィクションと50%のフィクションによって構成されています。
20世紀最優秀選手の巻



はい、はい。ええ、わかりました。その件については本人にそのように伝えておきます。


カルロス、電話の用件はなんだ?また雑誌のインタビュー取材か?


いや、その反対だ。残念だが、グローボ紙での連載が打ち切られた。


まだ3回目だぞ。何かの間違いじゃないのか。


アウダイールの連載が始まるそうだ。


ヤツはヘディングもできないんだぞ!オレはペレだ!!グローボの連中をここに連れて来い。


ペレ、キミは20世紀の伝説だ。そして、今は21世紀だ。もうキングペレの時代は終わったんだ。


わかった、わかった、カルロス。キミが努力してくれていることも、私の時代で無いことも、すべて解っている。しかし、あんなヘディングもできん男に。


[カルロス・ペドロの手記より抜粋]
1998年のワールドカップが終わった頃からだ。日々、ペレに対するリスペクトが薄れているように感じている。ペレはブラジルを思うあまり、厳しい言葉でセレソンを批判してきた。エースであるロナウドと激しく対立し、ブラジルとフランスの決勝戦の前日にもブラジルの勝利に否定的だった。ペレの予想は尽く的を外し、ブラジルのサポーターを呆れさせてしまったようだ。最近ではディエゴ・マラドーナがブラジルの若者から支持を得ている。テレビCMやラジオにも出演しだしたので、ブラジル人の間で評判になっていた。ますますペレは腐ってしまい、私にも手に負えそうにない。もっとも、ペレ自身にも問題がある。記念館の運営に経費を費やしてしまい、子供達の養育費を滞らせてしまった。金に困窮した挙句に仕事を安請け合いしたことで世間の印象を悪くしてしまったんだ。ペレはメディアが求めるままにコメントしていたが、サービス精神が裏目になり、サポーターの不信感を仰ぐことになった。アメリカの大手製薬会社は、ペレをバイアグラのCMに出演させないかと持ちかけている。これには私は難色を示している。サッカーの王様ペレのイメージではない。



来月にはケイシャのガキが大学に進学する。どうしても金が必要なんだ。


またか。なんとかするといってもスケジュールは白紙だぞ。博物館を売却するしかない。


あれはオレの分身だ。ガキのために手放す訳にはいかない。


キミをキングとして扱ってくれる国は限られてきた。日本にいるオリヴェイラにコンタクトしてみるよ。


すまない。ガキの親達から急かされているんだ。


[カルロス・ペドロの手記より抜粋]
現役を退いたとはいえペレの負けず嫌いは相変わらずだ。現役の選手よりもペレの闘志は勝っている。60歳を過ぎた彼がフィールドでプレーしていたとしても私は何の疑問も抱かないだろう。ペレを人間バイアグラと呼ぶ人たちがいるがまったくその通りだ。ここ2年はその手のCM出演依頼が後を絶たない。


なぁカルロス。FIFAの公式で20世紀最高の選手を選ぶというのはどうだ?

"こう切り出したのはペレだった"。20世紀最高の選手として自分が選出されれば、再び人々は生ける伝説ペレを評価すると考えたんだ。今のサッカー界には金が溢れている。タイミング的にもバッチリだ。グッドアイデアだった。私は直にFIFAにいる友人達にコンタクトを取り、ペレの企画意図を伝えることにした。連中も企画には賛同した。古参株はどれもこれも同じ事を考えていたのさ。FIFAが公式に行えば世界中の記者や関係者の票を得ることができる。ペレの選出はまず間違いないだろう。ところが我々には大きな誤算があった。FIFA会員はインターネットビジネスを目論んでいて、インターネットによる投票も受け付けることに決めたんだ。これがペレの思惑を狂わせることになった。関係者による組織票はペレに集まったが、一般参加のファンはマラドーナを選択した。総投票数でマラドーナが上回ってしまい、FIFA総会では選出方法について揉めに揉めることになる。


我々の世代はPCの操作も解らない。これではペレが一方的に不利だ。インターネットの票などアテにできない。


票の大半がオフィスから投じられたものだ。我々の世代に近いのではないか。


ブラジル人の票がマラドーナに集中している。一体どういうことなんだ!?


システムの問題では無い。これは事実として投票されている。


マラドーナの人間性を考えると、彼を選出するのはいささか抵抗を感じます。


南米の選手は概ね素行に問題があるからな。トップランクの連中を見ているとまるで変態ランキングのようだ。


いっそのこと2人とも選出してみてはどうだろう。こんなことで悩むのもバカげている。


FIFAは常に最高権威でなければならない。選出するのは1人だ。


ペレで決まりだ。彼以外にサッカーの王様は考えられない。

8時間に及ぶ議会の末、ペレとマラドーナの2人を[20世紀最優秀選手]として選出することに決まる。ペレはFIFA選出による20世紀最優秀選手となり、マラドーナはファン投票による20世紀最優秀選手となった。議会決議の採択によってペレはFIFA公式のお墨付きを与えられたが腹の底では不満が爆発寸前だった。ブラジルのファンに見限られたことでペレの闘志に火がついてしまった。あの日を境にして、それまで控えめだったペレが精力的にFIFA親善大使を務めるようになった。もちろん売名行為以外の何者でもない。言っておくが、ペレは金と名誉のためなら苦労をものともしない男だ。日本、韓国、ドイツ、アメリカにわたり、テレビや雑誌の取材に応じた。アメリカの製薬会社から依頼を受けていた「バイアグラのCM」も快諾した。これでペレ記念館の運営は向こう5年は問題ないだろう。養育費の目処もついた。あのイベントは窮地に追い込まれていた我々を救ってくれたのだよ。


2001年日本の雑誌社のインタビューに応えるペレ

"FIFA公式の20世紀最優秀選手に選ばれましたね?"
私は常にフットボーラーであり続けたんだ。すべての若いフットボーラーの模範としてね。



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